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THE ICONS

THE ANKLE BOOTS

長年にわたりショートブーツを愛用しているファッションライター兼エディターのカレン・ダース。特にヒールのあるタイプが好きだと言う。どうすればもっと輝かせることができるのか?カレンによると、それは本人の心持ち次第であるらしい。

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Woman in workwear clothing

「髪のスタイリングがうまくいった時のように、良いショートブーツは目立たず気付かれないもの。悪目立ちせず、その日の装いにさりげなく華を添えてくれる存在なのだ」―― カレン・ダース

女性はふたつのタイプに分かれると思う。ひとつはハイヒールを履くと「これで完璧!」と思うタイプ。もうひとつは、ハイヒールを履いた瞬間に「決まりが悪い……」と思うタイプ。長年、セクシーなビキニを着るよりも10センチのハイヒールを履く方が恥ずかしいと思ってきた私は、もちろん後者。実際、ストラップサンダルを履くだけでも首筋に汗をかいてしまうくらいだから、後者の世界代表に選ばれてもおかしくないくらいだ。

その点ショートブーツは控えめで履き心地も良く、いい意味でその存在が重要視されていなくて、ヒールがあっても例外的なアイテムだ。ヒールのあるシューズの中で、ショーツブーツは唯一私が怖気づくことなく履けるシューズだ。現にこの私が、玄関のドアノブに手をかける前にビルケンシュトックのサンダルやニューバランスのスニーカーに履き替えようなどと考え直すことなく外出できるのだ。

会計士の友人は、それはあなただけじゃないと言ってくれるが、実際にハイヒールが苦手で毎日昼も夜もずっと我慢しているという女性はたくさんいる。そうした女性にとって、ショートブーツはちょうどいいアイテムなのだ。

ここまでで、とりあえずショートブーツは履くのを怖がる必要もなければ見栄えが悪いわけでもないことはわかっていただけたと思う。むしろ一般的で使い勝手もよく、ヒールがあるシューズにしては誰もが臆せず履ける素晴らしいシューズだと断言できる。調和を重んじるタイプの女性にとって、ショートブーツは無敵の存在だ。絶対に周りから浮くことはないし、さりげなく雑踏の中に溶け込んでしまうから。そして、バスを追いかけて走っても平気なくらい実用性が高いのに、仕事帰りに突然飲みに行くことになっても困らないくらいグラマラスで、とにかく汎用性が高くて便利なのだ。

Woman in workwear clothing

ショートブーツは、カクテルドレスはもちろん、お気に入りのデニムとも相性の良いシューズで、いつの時代も廃れない定番であり続けてきた。その起源は実に1600年代までさかのぼる。ルイ14世はすでに真っ赤なキューバスタイルのショートブーツを履いてベルサイユ宮殿を悠々と歩いていたし、その後、ヴィクトリア時代になると、街行く女性はみな爪先が上を向いた、ボタンで留めるタイプのショートブーツを履いていた。そこから紆余曲折を経て、ショートブーツは1960年代にブロックヒールのブームとともに再び息を吹き返し、70年代にはプラットフォームが、80年代にはロバート・パーマー風のロックなスタイルがトレンドになり、今日に至っている。

最近のアイコニックなショーツブーツと言えば、アクネ ストゥディオズのピストルブーツやバレンシアガのネオプレン製シューブーツあたりが頭に浮かぶ。サンローランのシグネチャーであるロックンロールスタイルを取り入れ、ショーツブーツのアンバサダーとも言うべきデヴィッド・ボウイ風に仕上げた1足も、ショートブーツ史に刻まれるべき名品だ。

ショートブーツを履きこなした伝説的な人物について語るなら、やはりケイト・モスの名を外すことはできないだろう。クラシックなブラックレザーからシルバーのものや全面をスパンコールで覆ったものまで、彼女はあらゆるシーンに合わせて様々なショートブーツ姿を見せてくれた。またヴィクトリア・ベッカムも、空港に現れる時はショートブーツルックが定番だった。

毎シーズン、ファッション業界を席巻する新たなスタイルのショートブーツが誕生しています。

ただここで注意したいのは、これらのショートブーツはファッション的な安全牌であって、今すぐ飛びつくべきトレンドとは次元の異なるものだということ。トレンドは知っておいて損はないが、さほど意味のあるものではない。本当の意味で良いアイテムとは、時を経て証明されるものだから。私からのアドバイスは、そのことを頭の片隅に置いた上で今年の秋に買うべき1足を検討すること。あなたが選ぶべきショートブーツは、自分を洗練された女性に見せてくれるようなデザインだ。髪のスタイリングがうまくいった時のように、良いショートブーツは目立たず気付かれないもの。悪目立ちせず、その日の装いにさりげなく華を添えてくれる存在なのだ。特に優秀なブーツであれば、美味しいワインさながら時の経過と共に味わいが増していくはず。例えば私のアー・ぺー・セーの黒いレザーブーツは一目惚れしてから10年経った今も、その魅力が変わることはない。また、アイデのエナメルレザーブーツはなんとヒールの高さが5センチもあり(!)、私にとっては目が眩みそうなほどの高さで、もちろんこれよりヒールが高いシューズは持っていないのだが、同じく長いこと大切に履いている。