THE GOLD CHAIN
文明にゴールドがもたらされて以来、私たち人間はずっとゴールドのチェーンを身につけている。時代に左右されず、いつでもモダンに輝き続ける――、これがゴールドチェーンの最大の魅力だろう。控えめだけれどデコラティブで、時には意味ありげに輝く。首周りにまとうだけで、大袈裟に飾り立てずとも、ルック自体をランクアップしてくれる。『ハーパース・バザー』誌のエグゼグティブ・デジタルエディターを務めるサラ・カルマリによれば、ゴールドチェーンを楽しむのに数は問題ではないという。その理由とは?
「クオリティの高いものを選びさえすれば、ゴールドチェーンは生涯にわたって楽しめる。まさに一生モノです」―― サラ・カルマリ
私は、大袈裟でも何でもなく、ほぼ毎日ゴールドのチェーンを身につけている。人に言わせると、それはもう私のユニフォームと化しているらしい。繊細なダイヤモンド入り、チャンキー、ペンダントトップ付きのデコラティブスタイルなど、さまざまなチェーンを日替わりで楽しむのだ。首周りにゴールドのチェーンがない日は滅多にない。
私にとって初めてのチェーンネックレスは学生時代に母親からもらったものだ。シルバー製でハート型ペンダントトップがついたそのネックレスを、私は制服の下に隠してつけていた。ティーネージャーの頃はクロスのペンダントと一緒につけていたが、それを選んだのは宗教的な意味合いというよりも、当時人気だったTVドラマ『バフィー/恋する十字架』の影響が大きい。
20代の頃はずっとイニシャル入りのルイ・ヴィトンのダブルチェーンばかりつけていたが、最近はシンプルで飾り気のないミッソマのチェーンがお気に入りで、この原稿を書いている今もそれを身に付けている。異なる素材 (小さい頃にもらったジュエリーはシルバー製のものが多い) のチェーンと重ね付けすることもあるが、どちらかといえばイエローゴールドの方が好みだ。とは言え、人生は短いのだから、好きな素材のチェーンとミックスして楽しめばいいと思う。少なくとも、私はそうしている。
私のワードローブはリラックスしたルームウェアやレギンス、パジャマのような服ばかりだったから、ロックダウンの期間中はジュエリーコレクションが随分役立った。ZOOMミーティングでは、ゴールドのチェーンネックレスとフープイヤリング (両方ともスクリーンで目に付く大きさがベスト) を着けるだけで、きちんとした格好に見えるのだ。カジュアルなセーターもきちんとしたジェリーがあればそれなりのスタイルに見えてしまう。
ただ、それは私に限ったことではない。先日、2020年の半ば以降はジュエリーが好調で、特にファインジュエリーの売上が倍増しているジュエラーが多いとニューヨークタイムズ紙が報じていた。私がエグゼグティブ・デジタルエディターを務めている『ハーパーズ・バザー』誌でも、ジュエリー部門の業績はパンデミック以前の同期比316%とかなり好調だ。
これは驚くことではない。良質なジュエリーを買うことは結局投資と同じ意味を持つからだ。クオリティの高いものを選びさえすれば、ゴールドチェーンは一生もの。タイムレスだし、何にでも合うし、保管するのも簡単だ (ただし、チェーンが絡まるのが嫌なら、個別に収納できるジュエリーボックスを買うべきだろう)。チェーンは年齢もボディサイズも人種も性別も選ばない。自分に似合うかどうかより、好きかどうかで選べばいい。だから、オンラインで購入するのに適している。私の預金残高との相談は必要だが、ゴールドチェーンはいくらあって困ることはない。
ゴールドチェーンは愛と絆の証だと言われている。永遠に古くならず、ひとつひとつの輪がつながっているデザインを思えば納得がいくだろう。ギフトとしてこれ以上ふさわしいものは他に思い浮かばないほどだ。ギフトならシンプルなものを選べばまず間違いはない。リングほど意味深ではないから、相手に負担をかけることもない。
ゴールドのチェーンネックレスは、文明が始まった頃 (紀元前2,500年頃と言われている) から今日に至るまで、世界中で愛されてきた。古くは古代エジプト人がゴールドのネックレスを悪鬼から身を守るためのお守りとして身につけていたという記録も残っているらしい。古代ギリシャ人もペンダントトップや宝石付きのチェーンで自らを飾り立てていたし、古代ローマ人はボディジュエリーとして身に纏っていたという。中世になるとチェーンは権力や王権と結び付き、王や王妃 (ヘンリー7世はチェーン愛好家として有名) を始め、貴族階級や宗教界のトップが富の象徴として身につけるようになる。ファッション史上、もっとも強大な影響力を持つココ・シャネルは、自身がデザインしたチェーンをパールのネックレスと重ね付けしていたし、1980年代から90年代に活躍したラッパーたちも、必ずといっていいほど分厚いゴールドのチェーンネックレスをつけていた。彼らの間では、太ければ太いほどよしとされていたようだ。
話は現在に飛ぶが、今バズっているのはデザインが控えめのチェーンだ。2020年に放映されたイギリスのTVドラマ『ふつうの人々』でポール・メスカルが演じたコネルが身に付けていたゴールドチェーンは大きな話題となった。また、ケイト・ミドルトンとメーガン・マークルを始め、スーパーモデルのジジ・ハディッド、カーリー・クロスやナオミ・キャンベルら、おしゃれな女性たちは皆こぞってゴールドチェーンをコーディネートに取り入れている。デザインもさまざまなオプションがあり、ケネス ジェイ レーンはチャンキーなゴールドメッキのチェーン、コルネリア ウェブは少し繊細、ロザンティカはデコラティブなスタイルで人気だ。クロエやオフホワイト、JW アンダーソンなどのファッションブランドも遊び心があり重ね付けしやすいチェーンを提案している。
ジュエリーは歴史や文化、ファッションとさまざまな側面において存在価値があり、人の感情に訴えかけるものである。あなたが一番大切にしているジェエリーは親から受け継いだものかもしれないし、誰かからのプレゼントかもしれない。あるいは、何かに記念に自分で買ったものかもしれない。ゴールドチェーンは希少価値がありながらシンプルで、だからこそ毎日身につけられる点において、特別なジュエリーだと言えるのではないだろうか。