The Icons - The Little White Dress

THE ICONS

THE LITTLE WHITE DRESS

「白のワンピース」は夏らしいアイテムの代表格といっても過言ではないだろう。自由かつロマンチックで、毎日着ても飽きがこない――、これさえあれば暑い日もスタイリッシュでいられるのだ。今回はTHE OUTNET のコンテンツエディター兼フリーランスのファッションジャーナリストとして活躍するエラ・アレクサンダーが白ワンピースの魅力を徹底解説!

Wedding pictures
Blue cashmere sweater

「汚れることを恐れて白ワンピースを買わないなんて、私にはまったく共感できない」―― エラ・アレクサンダー

私が以前に持っていた白ワンピースの数は11点。ここ数年でワードローブの見直しを進め、今、手元に残っているのは6点だ。よく頑張って減らしたものだと自分で自分を褒めてあげたい。しかし女性というのは、春の兆しを感じるとつい新しい白ワンピースが欲しくなる生き物だ。オンラインショップでも実店舗でも、気づけば白ワンピースを目で追っている。私自身はいらないと思っても、男子に「着て欲しい!」と言われると、やっぱり買いたい気分になってしまう。自動販売機の前で欲しい欲しいと駄々をこねる子供の気を逸らすのと同じ要領で、私も白ワンピースから自分の目を離すことができればいいのだけれど…。

今も、映画『ザ・ウィッカーマン』を見終わったところなのだが、映画の内容を振り返ることなく、劇中で見た白ワンピースに似たアイテムをもうかれこれ1時間以上もオンラインで探し続けている。私にとって白ワンピースは夏を象徴するアイテム――太陽の光とロマンス、そしてバカンスの楽しみが詰まっているのだ。白ワンピースは夏に欠かせない特別な洋服であり、夏の夜には、まるで気付け薬のように一層気分を盛り上げてくれる。まさしく夏らしい体験に欠かせないワードローブなのだ。

白ワンピースの魅力に取り憑かれたのがいつのことだったか、記憶は定かではない。ただ、10代の頃から夏のワードローブに欠かせないアイテムだったことは確かだ。当時、白ワンピースを着る時にはスタイルによってヒロインを設定していたものだ。ちょっとハードなブーツを履き、荒野を白いワンピース姿で歩き回る『嵐が丘』のキャシー。『風と共に去りぬ』の冒頭で、たっぷりのラッフルで装飾された白いドレスをまとうスカーレット・オハラ。ソフィアコッポラ監督作品『ヴァージン・スーサイズ』を見た時は、主人公の少女たちが着ていた夢のような白いワンピースに夢中になり、似たワンピースを探して街中の古着屋を見て回ったものだ。『7年目の浮気』でホルターネックのワンピースをまとうマリリン・モンロー、『熱いトタン屋根の猫』でベルト付きのワンピースを着こなすエリザベス・テイラーを目の前にしたら、私はその神々しいまでの姿にきっとひれ伏してしまうだろう。

ただ、私が好きなのはもっとふわふわしたロマンチックなムードの白ワンピースだ。そこにセクシーさや高潔さは求めていない。風をはらみ、空気のように軽やかに揺れる素材が理想的だが、足元だけはテバのサンダルやバイカーブーツでハードにキメるのが私流のスタイリングだ。シンプルな白いミニワンピースに身を包み、カゴバッグを持ったジェーン・バーキンや、流れるように美しいマキシ丈のワンピースをまとい、シルバーのサンダルを履いたアニタ・ペレンバーグが私のスタイルアイコンである。

Blue cashmere sweater

多少実用的でなくても私は気にしない。優雅で美しい佇まいにも臆せずヘビロテアイテムとして活用しているので、私が持っている白ワンピースにはワインの染みやパスタソースのシミがあちこちについている。でもそれは、たとえて言えば笑い皺のように素敵な人生を送ってきた証。汚れることを恐れて好きなものを買わないなんて、私にはまったく共感できない。ふんわりとした白ワンピースは1年でも限られた期間しか活用できない特別なアイテムなのだから。

私も20代の時は妖精が着ているような幻想的な白ワンピースにハマっていたが、年を重ねるに従ってテイストが変わり、今ではもう少し落ち着いたスタイルを好むようになってきた。最近のお気に入りは、アンド ドーターのボリューミーなパフスリーブの白ワンピース。ギャップのデニム製ミニ丈ワンピはコンバースと合わせて何度も着てしまうし、マキシ丈のストラップワンピースも活用している。それから、イタリアのおばあちゃんの寝巻き風スタイルも好きだ。コットンかリネンのフェミニンなワンピースだから、ゴールドのチェーンを重ね付けして、グラディエーターサンダルを合わせて楽しんでいる。

白ワンピースは日焼けした肌とも相性抜群だ。バッシュのプレーリースタイルも、それほど価格が高くないので気兼ねなく着ている。もう少し艶っぽいのが好みなら、モリー ゴダードやシモーネ ロシャをチェックしてみてほしい。ラッフルがたくさんついているガーリーなデザインながら、強い意志が感じられておすすめだ。

結論として言えるのは、シルエットや素材を問わず、白ワンピースは夏の思い出を描く真っ白なキャンバスのような存在だということ。ジャクソン・ポロックの抽象画のように、誰にも遠慮せず思いのままに白ワンピースを楽しんでほしい。