The Icons - The Polo Shirt

THE ICONS

THE POLO SHIRT

使い勝手がよく、リラックスできて控えめながらもハイセンス。ポロシャツは男性のワードローブの中でも最もスマートなアイテムのひとつだ。米国版『グラツィア』誌のスタイルエディター、タイ・ガスキンスによると、男性にとってのポロシャツは、女性にとってのリトルブラックドレスに相当する定番なのだという。つまりは、昼夜を問わずに年中着られる究極のヘビロテアイテムだというわけだ。オーソドックスなデザインだろうが奇抜なデザインだろうが、ポロシャツは世の男性すべてにとって欠かせない存在なのである。

Wedding pictures
Blue cashmere sweater

「男性にとってのポロシャツは、女性にとってのリトルブラックドレスのようなもの。どちらもカジュアルな日中の装いから夜の外出向けのドレスアップまで、どんなシーンにも対応してくれる万能アイテムなのだ」 ―― タイ・ガスキンス

ポロシャツを考案したのは、ルネ・ラコステ(もちろん、あの「ラコステ」の創業者)だ。アイデアが生まれたのは、ポロの選手だった友人がボタンダウンの半袖シャツを着てラコステと一緒にテニスをした時。ラコステは自分用にポロシャツのデザインをし、今ではシグネチャーであり、彼のニックネームだった「クロコダイル」をモチーフとして胸元につけていたのだ。

私は物心ついた頃からずっとポロシャツを日常的にコーディネートに取り入れてきた。ヴァージニア州の南部で生まれ育ったということも付け加えておくべきだろうか。ポロシャツの魅力は、何と言ってもその使い勝手の良さにある。いつ頃からワードローブの主力になったのかは覚えていないけれど、私がファッションに目覚めたのは思春期の頃で、その頃からポロシャツを愛用し始めたように思う。あの頃と今ではポロシャツへの思い入れも違っているが、着心地が良く、どんなスタイルも邪魔しない当時の印象は今も変わっていない。

今ではさまざまなシルエット、スタイル、カラーバリエーション、素材、パターンなどバラエティに富んだポロシャツが市場に溢れている。ただ、気軽でタイムレスなアイテムであるのはもちろんだが、コーディネートの核になるポテンシャルも秘めているということを忘れてはいけない。例えばグッチやミッソーニを見てみてほしい。私は男性にとってのポロシャツを、女性にとってのリトルブラックドレスに例えるのが好きなのだが、カジュアルな日中の装いから夜の外出向けのドレスアップまで、どんなシーンにも対応してくれる万能ぶりに目を向ければ、納得していただけるはずだ (もちろんシューズや小物の使い方次第なのだが、それは追って触れるとしよう)。ポロシャツは、そこまでファッションに思い入れのない人でも、ちょっとその気になれるような頼りがいのあるアイテムなのである。

​​今はまさに夏真っ盛り、おまけに熱波の影響か世界的に気温がグングン上昇していて地球が温暖化の一途を辿っているという事実を私たちは突きつけられている。私はミニマムなスタイルをモットーとしているが、夏の理想のスタイルは、ポロシャツにパンツ、スニーカーを合わせたシンプルなコーディネート。涼しげで落ち着いていて、まさに王道のスタイルといえるだろう。

Blue cashmere sweater

さて、このあたりで小物とシューズの件を掘り下げておこう。私は仕事柄、オフィスから仕事絡みのイベントやパーティーに向かうことが多いのだが、特に予定がびっしりと詰まっていて、家に帰って着替える暇もない日は、必ずポロシャツを着るようにしている。一着のポロシャツを昼仕様から夜仕様のスタイルに変えるには、前述のように小物で調整すれば良い。例えばスニーカーをローファーに変え、アクセサリーを付けるだけでも印象はガラリと変わる。あとはベルトを変えれば、いつでもパーティーへと繰り出せるはずだ。

​​今、みなさんは野外のパーティーやバカンスの気分かもしれない。だが、秋は着実に近づいている。もちろんポロシャツとショートパンツの組み合わせは夏の間ずっと活用しただろうが、だからと言って、さっさとクローゼットにしまい込むのはちょっと待ってほしい。私は涼しい季節になると少し違った格好がしたくなるのだが、そこで活躍するのが、実はポロシャツなのだ。ポロシャツは、レイヤードスタイルの要としても堂々たる存在感を見せてくれることを覚えておいて損はない。

私はファッションエディターとしていつもランウェイを見てそのシーズンのアップカミングなトレンドをキャッチするのだが、2022-23年秋冬シーズンのメンズコレクションには、寒い季節のポロシャツ活用術のお手本となるような素晴らしい提案がたくさんあった。例えばフェンディではポロシャツの上にクラシックなテーラードジャケットを羽織っていたし、ボッターは、オーバーサイズの長袖ポロを提案してメディアを賑わせた。そう、今の時代、ポロシャツは1年を通して楽しめるアイテムなのである。